
お子様の「お口ぽかん」が気になり始めた保護者の方へ
寝顔を見たら口が開いたまま。前歯も少し前に出てきた気がする——そんな気づきから検索を重ねている方も多いはず。出っ歯と口呼吸は、互いに影響し合う関係にあると考えられています。本記事では、そのしくみと顔立ち・お口への影響、ご家庭でできる工夫と歯科医院で相談する流れを整理してお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 出っ歯と口呼吸は互いに影響し合い、顔立ちや歯並びの変化につながる可能性があるとされています
- 唾液減少によるむし歯・歯ぐきの炎症や、睡眠・免疫面への影響も指摘されています
- 舌トレーニングなど家庭での工夫に加え、状態によっては歯科での検査・矯正相談が勧められます
出っ歯と口呼吸が引き起こす悪循環と顔立ちへの影響

出っ歯(上顎前突)と口呼吸は、どちらかが一方的な原因というより、互いを引き寄せ合う関係にあると考えられています。歯並びを決めるのは骨格だけではありません。舌・唇・頬といった軟組織が毎日かけている力の均衡も、関わりが指摘されています3。
口呼吸が出っ歯を進行させ出っ歯が口呼吸を招くメカニズム
本来、舌は上あごの内側(口蓋)に接しているのが自然な状態とされます。ところが口を開けて呼吸する習慣が続くと、舌は下へ落ち込みやすくなる。すると上あごを内側から支える力が弱まり、歯列が左右から狭められてV字型に近づいたり、前歯が前方へ傾きやすくなったりする方向へ働くと考えられています。しかも唇が閉じていないため、外から前歯を押さえる口唇圧もかかりにくくなります。内側から押す力と外側から抑える力、その均衡が崩れることが前歯の前方傾斜につながる可能性が指摘されています。
逆に、前歯が前に出ていると唇を閉じるだけでも力が要ります。気づけば口が開き、口呼吸が定着していく——この繰り返しが、いわゆる悪循環と呼ばれる状態です。前歯が閉じ合わない開咬(オープンバイト)を伴うケースもあります。
放置によって懸念されるアデノイド顔貌や口元の変化
成長期のお子様では、呼吸の仕方が顔面骨格の育ち方に関わる可能性が指摘されています3。口を開け続けると下あごは下後方に位置しやすく、あご先が引っ込んで面長な印象になる、いわゆるアデノイド顔貌や口ゴボと表現される口元の突出感につながる場合もあると言われています。ただし顔立ちには遺伝的な要素も大きく、口呼吸だけで決まるわけではありません。
また、扁桃やアデノイドの肥大、慢性的な鼻づまりが背景にある場合は、歯科だけで完結しないこともあります。鼻がつまるから口が開くのか、口が閉じにくいから口呼吸になるのか。この見極め次第では耳鼻いんこう科との連携が望ましいケースもあるため、まずは原因の切り分けから始めることが大切です1。
見た目だけではないお口と全身への健康リスク
口呼吸で気になるのは顔立ちだけではありません。お口の中の環境、さらには睡眠や体調にまで波及していく点も押さえておきたいところです。
唾液の自浄作用低下によるむし歯や歯ぐきの炎症リスク
唾液には、汚れを洗い流す自浄作用、細菌の働きを抑える作用、溶け出したミネラルを歯に戻す再石灰化作用などが備わっています1。口が開いたままだと空気にさらされて唾液が蒸発し、口腔乾燥(ドライマウス)の状態へ傾きます。歯の表面に汚れが留まりやすくなり、むし歯のリスクが高まる方向へ働くと考えられています。
とりわけ前歯は乾きやすい部位。丁寧に歯磨きをしているのに前歯だけ着色や白濁が目立つ場合、口呼吸が背景にある可能性も考えられます。乾燥は歯ぐきの防御力にも影響し、前歯の歯ぐきが赤く腫れぼったくなるケースも少なくありません。歯周組織の炎症は自覚しにくいまま進むことがあるとされ、定期的なチェックが勧められています4。口臭が気になりやすくなるのも、唾液量の減少と関係するとされています。
免疫力の低下や睡眠の質の低下といった全身への影響
鼻には、吸い込んだ空気を加湿し、ほこりやウイルスを絡め取るフィルターの役割があります。口呼吸ではこの過程を経ずに冷たく乾いた空気がのどへ届くため、粘膜が乾き、感染症にかかりやすい状況をつくるとも指摘されています2。
睡眠面では、いびきや睡眠時無呼吸症候群との関連が知られています。舌が落ち込んで気道が狭くなれば、夜間の呼吸は浅くなりがち。成長期のお子様では、日中の集中力や落ち着きに影響が及ぶ可能性も報告されており3、単なる癖として見過ごさない視点が求められます。
当院では、大型モニターを使ってお口の状態を目に見える形でご説明することを心がけています。数値や画像をご一緒に確認いただくと、なぜ今の状態が起きているのかをご理解いただきやすくなります。
出っ歯と口呼吸を改善するための家庭での工夫と歯科治療

気づいた時点から取り組めることは、意外と多くあります。とはいえ、ご家庭のケアだけで対応できる範囲には限りがある——この点も正直にお伝えしておきたいところです。
家庭でできる舌トレーニングとお口周りの癖のセルフチェック
まずは現状の把握から。次の項目に当てはまるものがないか、お子様とご一緒に確認してみてください。
- 唇の状態:テレビを見ている時、宿題中に口がぽかんと開いていないか
- 舌の位置:安静時に舌先が上あごの内側についているか、下の前歯を押していないか
- 睡眠時:いびき、寝起きの口の渇き、朝の機嫌の悪さがないか
- 姿勢と食べ方:猫背で食事していないか、丸のみ・片側噛みの癖がないか
- 鼻の通り:鼻づまりが慢性化していないか
取り組みの柱になるのがMFT(口腔筋機能療法)、舌や口周りの筋肉を鍛えるトレーニングです。舌先を上あごの前方(スポット)に置く練習、唇を閉じる力を養う運動などを、遊びの延長として毎日短い時間続けていきます。市販の鼻呼吸テープや口閉じサポーターは、鼻閉がある状態で使うと呼吸を妨げる可能性があるため、使用前に歯科医院や耳鼻いんこう科へご相談ください。
自力ケアの限界と歯科医院での検査・矯正アプローチ
トレーニングは癖の改善を後押しする役割が期待されます。ただ、すでに骨格や歯列に変化が生じている場合、セルフケアだけで歯の位置を動かすことは難しいとされています3。特に成人では、筋機能の改善が現状の維持に寄与しても、前歯の傾きそのものへ働きかけるには矯正的な処置が必要になるのが一般的です。
当院では歯科用CTや口腔内スキャナー(SHINING 3D、iTero)などの設備を導入し、あごの骨格や気道の状態、歯列の三次元的な情報を踏まえた診断を行っています。お子様の場合は成長のタイミングを見ながら、あごの育ちを促す小児矯正から入るのか、永久歯が生え揃うのを待つのかを検討します。マウスピース矯正では、全体矯正のプランを税込74.8万円からご案内しています(自由診療。費用や期間、治療の経過は状態により異なります)。
矯正はゴールではなく通過点。装置が外れた後の保定と、日々のセルフケア、そして定期的なメンテナンスまで見据えてご提案しています。気になり始めた今が、相談を始める良いきっかけです1。
よくある質問
Q1. 何歳から相談したほうがよいでしょうか。
A. 明確な線引きはありませんが、前歯が生え替わり始める6〜7歳頃は、あごの成長と歯並びの両方を確認しやすい時期のひとつとされています。気になった段階でご相談いただければ、今すぐ治療を始めるか、経過を見守るかの判断材料をお示しできます。
Q2. 大人でもトレーニングだけで前歯の傾きは変わりますか。
A. 筋機能の改善は口を閉じやすくすることや現状の維持に役立つ可能性があります。ただ、すでに傾いている歯の位置へ働きかけるには矯正的な処置が必要になるのが一般的です。まずは検査で骨格性か歯性かを把握することをお勧めします。
Q3. 市販の鼻呼吸テープは使っても構いませんか。
A. 鼻がしっかり通っていることが前提になります。鼻づまりがある状態やお子様への使用は、呼吸を妨げる可能性があるため慎重な判断が必要です。事前に歯科医院や耳鼻いんこう科へご確認ください。
Q4. 親子で一緒に受診してもよいですか。
A. もちろん可能です。保護者の方ご自身の歯並びや口元の状態も併せて拝見すると、生活習慣の共通点が見えてくることもあります。当院にはキッズスペースや完全個室の診療室もございますので、ご一緒の受診もご相談ください。
Q5. 矯正治療の費用はどのくらいかかりますか。
A. 装置の種類や範囲によって幅があります。当院のマウスピース矯正では、前歯の部分矯正が税込45.1万円、奥歯を含む全体矯正が税込74.8万円というプランをご用意しています(自由診療)。検査結果をもとに、期間の目安と併せてご説明いたします。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
3. 日本小児歯科学会 https://www.jspd.gr.jp/
4. 日本臨床歯周病学会 https://www.perio.jp/
2006年 明海大学 歯学部付属明海大学病院臨床研究
2007年 明海大学 臨床研修終了
2007年 埼玉県の一般歯科勤務 埼玉県地域医療に尽力
2008年 槙原歯科浦和インプラントセンターにて勤務
院長・センター長に抜擢
2014年 ハーバード大学インプラントコース修了(アメリカボストン)
2015年 谷口歯科クリニック 開院
2017年 医療法人善心会 谷口歯科クリニックとして医療法人化
2017年 テンプル大学インプラント解剖学コース修了(アメリカ)
2018年 ベルン大学インプラントコース修了(スイス)
2023年 京橋オレンジ歯科クリニック 開院
日本臨床歯周病学会
日本補綴歯科学会
MID-g役員
日本歯周病学会
日本矯正歯科学会
デンツプライシロナ(アストラ)インプラント認定医
スタディーグループKZ会主催
あわせて読みたい関連記事

