突然ですが、皆様は「健康寿命」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?
健康寿命とは、
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人の手を借りず(介護を必要とせず)、
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呼吸・歩く・食事・排せつ・睡眠などの日常の動作をご自身の力で行える年齢
を指す言葉です。
活き活きとご自身の力で生きていくには、生命としての寿命(生命寿命)を延ばそうとするのではなく、健康寿命を延ばすことが大切。
健康寿命の延伸に深く関わっているのが、「噛む力」です。
今回は、「噛む力」と「健康寿命」の深い関係について、お話しします。
■「噛む力」と「健康寿命」の深い関係
◎しっかりと噛む力を保つことが、健康寿命の延伸にもつながります
健康な歯を維持し、しっかりと噛む力を保つことはとても重要です。
しっかりと噛む力を保つことで以下のような効果を期待でき、健康寿命を延ばしやすくなります。
①弾力のある肉や繊維質の魚・野菜など、豊富な食材をしっかり噛んで、バランス良く栄養を摂取できる
健康な歯を維持することで、毎日の食事において
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弾力のある肉
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繊維質の魚・野菜
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ナッツなどの歯ごたえのある物・硬い物
など、豊富な食材をしっかり噛んで、バランス良く栄養を摂取できます。
②噛む刺激によって脳への血流が増加し、認知症の予防につながる
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健康な歯が20本以上残っている方
と比べて、
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残っている歯が少なく、しっかり食べ物を噛めていない方
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合わない入れ歯・進行した歯周病などが原因で、しっかり食べ物を噛めていない方
は約2倍、認知症を発症しやすいことが研究によって報告されています(※)。
(※)神奈川歯科大学大学院 山本龍生教授
「歯科から考える認知症予防への貢献」
(2017年)より引用。
[しっかり噛む力を維持している方]
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健康な歯が多く残っており、しっかり食べ物を噛めている方
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インプラントなどの安定性が高い人工歯で歯を補い、しっかり食べ物を噛めている方
上記のように、しっかり食べ物を噛めている方は、噛む刺激によって脳への血流が増加しやすいです。脳への血流が増加すると、認知症の予防につながります。
■お口の機能が衰える「オーラルフレイル」の怖さ
◎お口の機能が衰え、しっかり噛めなくなると、全身の健康が悪化しやすいです
「オーラルフレイル」とは、しっかり食べ物を噛めなくなるなど、お口の機能が衰えた状態を指す言葉です。
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むし歯
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歯周病
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歯根破折
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事故
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ブリッジ・入れ歯を支えている歯へのダメージ
などが原因で多くの歯を失い、お口の機能が衰えて「オーラルフレイル」状態になるケースが少なくありません。お口の機能が衰え、しっかり噛めなくなると、以下のように全身の健康が悪化しやすくなります。
1.あまり噛まずに済む、糖質中心の食生活に偏りやすくなる
お口の機能が衰えている方は、
弾力のある肉や、繊維質の魚・野菜、ナッツなどの歯ごたえのある物・硬い物などをしっかり噛みにくくなり、
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おかゆ、おじや
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やわらかいパン(食パン、サンドイッチなど)
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やわらかく煮込んだ麺類
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カレー、シチュー
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プリン、ゼリー
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ジュース
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お酒
など、あまり噛まずに済む糖質(炭水化物・糖質)中心の食生活に偏りやすい傾向が見られます。
2.糖質中心の食生活が原因で栄養バランスが偏り、肥満・糖尿病・高血圧などのリスクが高まる
主食(ご飯・パン・麺類)や甘い物、ジュースやお酒など、糖質中心の食生活は糖質過多・カロリー過多になりがちです。
お口の機能が衰えている方が糖質中心の食生活になると、糖質過多・カロリー過多が原因で
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肥満
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糖尿病
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高血圧
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高脂血症
などのリスクが高まります。
3.しっかり噛めないことにより、胃腸などの消化器系器官にかかる負担が増える
お口の機能が衰えている方は、しっかり食べ物を噛みにくくなり、咀嚼回数が減りがちです。
しっかり噛めない食生活が続くと、食べ物の咀嚼不足によって、胃腸などの消化器系器官にかかる負担が増えます。
4.栄養バランスが偏り、筋肉量の低下や骨粗しょう症などのリスクが起きやすくなる
お口の機能が衰えている方は、上記でもお伝えしたように食べ物ををしっかり噛みにくくなり、糖質中心の食生活になりやすいです。
糖質中心の食生活を続けていると、噛み応え・歯ごたえのある食材の摂取量が減り、
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タンパク質(筋肉を作り、筋肉を維持する材料)
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カルシウム(骨を作り、骨を丈夫にする材料(ミネラル))
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ビタミン(代謝をうながしたり、身体の調子を整える材料)
が不足しがちに。栄養バランスの偏り・必要な栄養の不足によって、筋肉量の低下や骨粗しょう症などのリスクが起きやすくなります。
5.噛む刺激が不足しがちになり、認知症の発症リスクが高まる
以下のような原因でお口の機能が衰えている方は、糖質中心の食生活に偏りやすく、噛む刺激が不足しがちです。
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多くの歯を失い、歯が抜けた状態を放置している方
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進行した歯周病などが原因で、歯がガタガタの方
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合わない入れ歯などが原因で、しっかり噛みにくい方
噛む刺激が不足すると脳への血流が低下し、認知症を発症するリスクが高まります。
【しっかりと噛める歯を保つor安定性が高い人工歯を手に入れ、健康寿命を延ばしましょう】
お口の機能の衰え「オーラルフレイル」を防ぎ、健康寿命を延ばすには、
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しっかりと噛める健康な歯を保つ
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インプラントなど、安定性が高い人工歯で歯を補う(多くの歯を失った・入れ歯が合わない場合)
ご自身の健康な歯を保つには、まずは、以下の2つのケアを継続することが大切です。
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毎日のセルフケア(歯磨き+歯間清掃)をきちんと行う
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歯科医院で定期的に検診(お口の健康チェック+歯のクリーニング)を受ける
ご自身の健康な歯を保つのが望ましいですが、多くの歯を失った・入れ歯が合わない場合は、インプラントなど、安定性が高い人工歯で歯を補うことで、しっかり噛める力を保ちやすくなります。
かけがえのない、私たちの歯。
豊富な食材をしっかり噛める歯(orインプラントなどの安定性が高い人工歯)を保ち、健康寿命を延ばして、これからの人生を活き活きと過ごしましょう。