歯科治療を含め、日本では国民皆保険制度(国民健康保険&社会保険(健康保険))により、保険診療と自由診療を選べます。
日本人にはお馴染みの保険制度ですが、歯科の保険診療と自由診療には、どのような違いがあるのでしょうか?
今回は、「保険診療と自由診療の違い」および「日本と海外の保険制度の比較」のお話です。
目次
■保険診療と自由診療の違い
◎保険診療では、機能を回復するために必要な「最低限」の診療を行います
日本の歯科における保険診療では、以下のような、基本的なお口の機能を回復するために必要な「最低限」の診療を行うよう、定めています。
[保険診療の対象になる治療内容]
- 噛む機能の回復
- 見た目の回復
- 発音の回復
国のルールにより、保険診療では、お口の機能を回復するための必要最低限の診療しか行えません。保険の治療で用いる歯科素材や機器は制限されています。診療にかける時間も、保険の場合は一人の方にあまり長い時間をかけてはいけない(=過剰診療の禁止)、というルールがあります。
{以前と比べて、現在は保険診療で用いられる歯科素材が増えています}
以前は、むし歯治療などで用いる歯科素材は銀歯(金銀パラジウム合金)やレジンなど、ごく限られた物でした。現在は、条件つきではありますが、チタンや、セラミックの含有量を高めたハイブリッドレジン(CAD/CAM冠)が保険適用されています(※)。
(※)チタン、CAD/CAM冠を取り扱っていないクリニックもあります。
必要最低限の診療に限られる、保険診療。必要最低限というルールがあるため、保険では、必要最低限を超えた「より快適な使い心地」や「より見た目の良い(審美的な)」診療(=自由診療)は行えません。
◎自由診療には、素材や診療時間の制限がありません
素材や診療時間が限られる、保険診療。
一方、自由診療には、素材や診療時間の制限がありません。
歯科の自由診療では、ゴールド、セラミックなど、より歯への適合性が高く、審美性に優れた素材を用いることができます。
素材の制限がないことに加え、自由診療では、一人の患者様にじっくりと時間をかけ、診療を行えます。
■海外の保険制度はどんな感じ?
◎日本のほか、台湾、イギリス、カナダ、スウェーデンなどには国民皆保険制度があります
日本のほか、台湾、イギリス、カナダ、スウェーデンなどには、歯科治療を含め、医療に対する国民皆保険制度が存在します。
いずれの国も、お口の機能を回復するために必要な最低限の診療は、保険適用です。ただし、見た目の美しさを求める審美治療など、必要最低限を超える診療は日本と同様に自由診療(自費診療)になる国が多いです。
◎アメリカなど、国民皆保険制度が存在しない国も
世界の医療制度においては、日本や上記のような国々が採用している国民皆保険制度は、珍しい存在です。
発展途上国には、国民皆保険制度はおろか、充実した医療すら受けられない国も少なくありません。
世界には、先進国であるにも関わらず、国民皆保険制度が存在しない国も。
それは、世界1位の経済・軍事大国、アメリカです。
アメリカには、日本のような、純粋な国民皆保険制度がありません。
先進国では唯一、長いあいだ、国民皆保険制度がなかったアメリカですが、オバマ大統領時代の2010年には、保険を購入できない貧困層の人達を救う目的で公的保険&格安の民間保険制度(オバマケア:メディケイドの拡大)が導入されました。
しかし、オバマケアは公的保険に加入できる人達が限られている(高齢者や貧困者など)ほか、民間保険の購入をサポートするシステムであり、日本を含む先進国のような、純粋な国民皆保険制度とは異なります。
アメリカでの歯科治療にかかる費用の高さは、日本人にはイメージしにくいほど、(あまり良くない方向に)突き抜けています。
例えば、アメリカでは、むし歯治療は1本の歯につき平均で10万円程度の費用がかかるとされています。
日本では、歯の神経に達していない軽度のむし歯であれば、1本の歯につき平均で1,000~2,000円程度で、保険で治療を行えます。
歯の神経を抜く必要があり、根管をお掃除する根管治療でも、日本では、保険で1本の歯につき平均で3,000~5,000円程度、高くても10,000円以内で収まることが多いです。
慎重さが求められる根管治療に保険を適用でき、3,000~10,000円ほどで診療を受けられる日本。日本の歯科治療における保険診療の費用感(特に根管治療)は、世界的に見ても、格安と言えるレベルです。
(※)上記の保険診療の費用は、
3割負担の場合の金額です。
(※)患者様やお口の状態により、
保険の治療にかかる総費用が異なります。
【ご予算・ご希望に合った診療方式を選ぶことをおすすめします】
保険診療は、お口の機能を回復するための必要最低限の治療になります。ただし、必要最低限だからと言って、「保険の歯科治療はダメ」という訳ではありません。保険診療でも、噛む機能と見た目を回復させることが可能です。
保険診療でも噛む機能と見た目の回復は可能ですが、より、快適な使い心地、高い機能性、美しい見た目をご希望の方には、自由診療が適しています。
自由診療は、治療費のすべてが患者様の自己負担(自費)になります。自費になりますが、長い目で見た場合、自由診療の方がコストパフォーマンスに優れていることも。
[コストパフォーマンスに優れた自由診療の例]
- セラミックやゴールドの詰め物・被せ物(歯との適合性が高く、再虫歯になりにくい)
- インプラント(安定性が高く、ほかの歯を傷つけない)
今回は、「日本の歯科治療における保険診療と自由診療の違い」および「日本と海外の保険制度の比較」について、お話をさせていただきました。
歯科治療を受ける際は、どのような治療であればご納得・ご満足できるのかをご検討いただいた上で、ご予算・ご希望に合った診療方式を選ぶことをおすすめします。