ぶつけたこともないのに、子どもの歯が欠けている…
むし歯でもないのに、子どもの歯が茶色くなっている…
お子様に上記のような「見覚えのない歯の欠け・歯の変色」は見られませんでしょうか?上記のような歯の欠け・歯の変色が見られる場合、「エナメル質形成不全」の可能性があります。
目次
■エナメル質形成不全とは
◎子どもの歯のエナメル質がしっかり作られない病気です
エナメル質形成不全とは、何らかの原因(後述します)により、子どもの歯(歯を覆うエナメル質)がしっかり作られない病気です。
歯の種類を問わず、乳歯・永久歯、どちらにもエナメル質形成不全が起きる可能性があります。
◎7~9歳の子どもの5~10人に1人(約2割)にエナメル質形成不全が見られます
子どもを対象にした歯の調査では、日本人の7~9歳の子どもの5~10人に1人、約2割の子どもにエナメル質形成不全が見られた、という報告があります(※)。
(※)日本小児歯科学会 富山大学 共同研究
「エナメル質形成不全の有病率」(2017)より引用。
■エナメル質形成不全の症状
◎生えたばかりの歯の欠け・歯の変色などの症状が見られます
エナメル質形成不全の方は、主に、以下のような歯の症状が見られます。
[エナメル質形成不全の主な症状]
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生えたばかりなのに、歯(乳歯or永久歯)の表面が欠けている
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歯が茶色or黄色に変色している
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歯がまだらに白っぽくなっている
◎原因により、歯の欠け・歯の変色が現れる位置が異なる場合があります
全身的要因によるエナメル質形成不全は、左右対称に歯の欠け・変色が現れやすいです。左右対称に加え、全身的要因の中でも遺伝が原因の場合はほとんどのケースにおいて、すべての歯に欠け・変色が見られます。
局所的要因のエナメル質形成不全はランダムな位置の歯に欠け・変色が起きることが多いです。
◎エナメル質形成不全が起きると、むし歯になりやすいです
エナメル質形成不全の歯はもろく、むし歯になりやすいです。エナメル質形成不全の歯がむし歯になると、歯質のもろさにより、短期間で歯の神経にむし歯菌が達してしまうことも。
■エナメル質形成不全の原因
◎様々な原因により、エナメル質形成不全をひき起こす可能性があります
[エナメル質形成不全の主な原因]
妊娠中のお母さんからの影響(全身的要因)
妊娠中の栄養不足、妊娠中に飲んだお薬(テトラサイクリン系の抗生物質など)などの影響により、胎児である赤ちゃんがエナメル質形成不全になることがあります。
胎児のときの代謝異常(全身的要因)
胎児としてお母さんのお腹の中にいるとき、胎児の身体の代謝機能(身体の器官を作る機能)に異常があると、エナメル質形成不全を起こすことがあります。
遺伝(全身的要因)
遺伝が原因でエナメル質形成不全を起こすことがあります。
遺伝がエナメル質形成不全をひき起こすメカニズムについては、現時点では、はっきりとは解明されていません。
子どもの頃(乳歯の時期:3~6歳頃)の高熱・怪我・重度のむし歯など(局所的要因(後天的要因))
乳歯の時期の3~6歳頃に高熱を出した・転んで歯を強くぶつけた・重度のむし歯になった、などの要因があると、永久歯のエナメル質形成不全を起こすことがあります。
■エナメル質形成不全の治療方法について
◎形成不全が起きた歯を健全な状態に戻すのは難しいです
エナメル質形成不全の治療方法についてですが、残念ながら現在の医療技術では、形成不全が起きた歯を健全な状態に戻すのは難しいです。
歯を健全な状態に戻すのは難しいのですが、歯科医院では以下のような治療を行います。歯の強度を高め、しっかり噛める歯にする+歯の見た目をカバーするのが歯科医院でのエナメル質形成不全に対する治療の主な目的です。
[歯科医院で行う、エナメル質形成不全の主な治療]
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フッ素塗布(歯の変色が比較的軽い場合)
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レジン充填
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詰め物・被せ物
【日頃から子どもの歯の健康状態に留意し、歯科医院で定期検診を受けることが大切です】
遺伝などの様々な要素が関係するため、現時点では、エナメル質形成不全に対する確立された予防方法はありません。確立された予防方法はありませんが、以下のような対策により、エナメル質形成不全を起こし得るリスクの軽減にアプローチできます。
[エナメル質形成不全のリスクを軽減する方法]
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妊娠中は必要な栄養を摂る
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妊娠中はテトラサイクリン系などのエナメル質形成不全(+テトラサイクリン歯)の原因となるお薬の摂取を避ける
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転ばないようにするなど、日頃から、歯を強くぶつけないように気をつける
エナメル質形成不全やむし歯などのお口の病気・異常にいち早く対処するためにも、お子様の歯に異変が見られるときはできるだけ早めに歯科医院までご相談ください。