
年齢の目安と吸う習慣の程度から卒業時期を考える
指しゃぶりは3歳頃までは無理にやめさせなくてよいとされますが、4〜5歳以降も続く場合は歯並びへの影響が残りやすくなります1。指しゃぶりやおしゃぶりなどの吸う癖は、前歯が閉じない開咬になりやすいことと関係があると報告されています2。ただし影響の大きさは年齢だけでなく、吸う時間や強さによっても変わります。
この記事では、おうちで書きとめておきたい前歯の見かたや、お子様の気持ちに寄りそう声かけ、歯科健診で相談するときのまとめ方をお伝えします。
この記事の要点まとめ
- 指しゃぶりは3歳頃まではそっと見守り、4歳頃から吸う時間や強さをつかみ、5歳を過ぎても続くときは歯科で相談する、というのが目安です。
- 前歯の隙間や傾き、吸う頻度や夜間の様子を記録し、写真とともに健診で伝えると経過を確認しやすくなります。
- 叱らずに手をつなぐなど代わりの関わりを取り入れ、家庭や園で声かけをそろえながら卒業を支えます。
指しゃぶりは何歳まで見守れる?歯並びへの影響は年齢だけで決まる?
指しゃぶりは3歳頃までは過度に心配しなくてよいとされ、4〜5歳以降も続くと歯並びへの影響が残りやすくなります1。ただし、影響の大きさは年齢だけで決まるわけではなく、吸う時間や頻度、力の強さによって左右されます23。
指しゃぶりやおしゃぶりなどの吸う癖があると、前歯が閉じない開咬(かいこう:奥歯で噛んでも上下の前歯に隙間ができる状態)になりやすいことが報告されています2。乳歯には、あとから生えてくる永久歯のための場所と、歯並びの土台を保つ役割があります。そのため、永久歯の前歯が生える頃までに習慣を見直しておくと、歯並びへの影響を抑えやすくなります。
3歳・4歳・5歳以降で変わる見守り方の目安
年齢ごとの目安は、3歳頃まではそっと見守り、4歳頃から少しずつ気にかけ、5歳を過ぎても続くときは歯科医院でみてもらう、という流れです。3歳頃までの指しゃぶりは、お子様が自分の気持ちを落ち着かせるための自然なしぐさとして、見守ることが多くあります。
4歳になったからといって、その日から急にやめさせる必要はありません。4歳頃は吸う回数や場面を把握し始める時期とし、5歳以降や前歯の生え替わりが近づく時期まで続く場合は、一度歯科医院で噛み合わせを確認してもらうと判断しやすくなります1。
年齢よりも影響を左右する「吸う時間・回数・強さ」
歯並びへの影響は、何歳かということ以上に「1日に吸う合計時間」「吸う頻度」「吸う力の強さ」の3つで変わります23。さらに、どの指をどの向きで口に入れているかも関係します。
指が上の前歯をうら側から押し、下の前歯をおさえこむ力が毎日長い時間かかると、少しずつ歯のかたむきやあごの形が変わっていきます。ときどき口に入れるくらいなら変わりにくい一方、毎日長い時間すい続けていると、乳歯のならびやあごの育ちに力がかかり続けます。
寝つく前だけでも長く強く吸っていれば影響する?
日中ほとんど吸っていなくても、寝つく前からの吸い方によっては歯並びが変わることがあります。確認したいのは、眠りについた後の状態と指に残る跡です。
寝入りばなの短い時間だけで、眠ると自然に指が口から外れるのであれば、様子を見やすい状態といえます。反対に、眠った後も指が口に入ったまま何時間も吸い続けている場合や、指に固い「吸いだこ」ができるほど強い力で吸っている場合は、夜間だけでも前歯に力が加わりやすいため注意が必要です23。
仕上げ磨きで見える前歯の隙間は、歯科で確認すべきサイン?

仕上げ磨きのときに「奥歯で噛んでいるのに上下の前歯の間に隙間がある」「上の前歯が前に出てきた」と感じたら、歯科医院で確認しておくと判断しやすくなります。こうした変化は、指しゃぶりによる開咬や上顎前突(じょうがくぜんとつ:上の前歯が前方へ傾く状態)の始まりである可能性があるためです23。
家庭での見た目だけでは一時的なものか判断しにくいため、普段の仕上げ磨きの姿勢で前歯の噛み合い方を確かめておくことが手がかりになります。
奥歯で噛んだときに確かめたい3つの前歯の様子
仕上げ磨きのついでに、「イー」と奥歯でしっかり噛んでもらい、次の3つの様子を確かめてみてください23。
- 上と下の前歯のすき間(開咬):奥歯をかみ合わせたとき、上と下の前歯が閉じきらずに、たてのすき間があいていないか2
- 上の前歯のかたむき(上顎前突):上の前歯がくちびるの側へかたむき、下の前歯との前後の差が大きくなっていないか3
- 上の歯ならびの幅:指を強くすう力でほおが内がわに引かれ、上の歯ならびのアーチがせまくなっていないか3
月に1回程度、同じ角度からスマートフォンで口元の写真を撮っておくと、隙間が広がっているかどうかの変化を追いやすくなります。
「乳歯だから生え替われば治る」は本当?よくある誤解
「乳歯の歯並びが変わっても、永久歯に生え替われば自然に整う」と思われがちですが、そのまま永久歯に引き継がれることがあります。乳歯は、後から生えてくる永久歯が並ぶためのスペースと土台を保つ役割を担っているためです4。
指しゃぶりによってあごの骨の形や前歯の傾きが変化した状態が続くと、その土台の上から生えてくる永久歯も影響を受けやすくなります3。乳歯の時期だからこそ、永久歯が生える前の土台を整えておく視点が欠かせません4。
やめた後に自然に戻りやすい場合と戻りにくい場合
乳歯の時期のうちに指しゃぶりを卒業しておくことが大切で、永久歯が生えそろっていく時期まで癖が続くと、噛み合わせの乱れにつながることがあります5。一般的には、乳歯の時期の早いうちにやめ、舌や唇のほかの癖が残っていなければ、前歯の隙間は自然に閉じていくことがあります。ただし、やめた後の経過には一人ひとり個人差があります。
指しゃぶりをやめた後も、空いた隙間に舌を押し込む癖(舌突出癖:ぜつとっしゅつへき)や下唇を吸う癖が残ると、隙間が閉じにくくなることがあります。とくに下唇を噛んだり吸ったりすると、上の前歯が前へ、下の前歯が内側へ傾いて出っ歯になり、口が閉じにくくなって口呼吸につながることもあります1。習慣がなくなった後も、しばらくは前歯の噛み合わせを見守っていくことが大切です。
お子様の気持ちを大切にしながら、指しゃぶりの卒業を促すには?
指しゃぶりの卒業を促すには、無理に取り上げるより、吸いたくなる場面に代わりの落ち着ける関わりを用意し、家族で同じ声かけを続けることが支えになります。
ほめるなど前向きな働きかけが、やめるきっかけの一つになります。指しゃぶりは不安や退屈を和らげる心の支えでもあります。下のお子様が生まれて親御様を待つ時間が増えた時期に指しゃぶりが増えるのは珍しいことではありませんので、保護者様がご自身を責める必要はありません。
寝つく前・ママを待つ時間に合わせた代わりの関わり方
指が口に向かいやすい場面が分かっている場合は、その時間帯に合わせて手や気持ちが満たされる代わりの行動を取り入れていきます5。
- 寝つく前の場面:布団に入ったら手をつなぐ、背中を優しくトントンする、お気に入りの柔らかいタオルやぬいぐるみを両手で持たせる
- 親御様を待つ場面:「オムツを替えたらぎゅーしようね」と終わりの見通しを言葉で伝える、シール貼りやブロックなど両手を使う遊びを渡しておく
「吸わないで」と行動を止めるよりも、自然と指が口から離れる状況を作ることが助けになります。
叱る・苦いものを塗る・他の子と比べることを避けたい理由
早くやめさせたい気持ちから、強く叱る、無理やり指を引き抜く、きょうだいやお友達と比べるといった対応をとると、お子様の緊張や不安が高まり、かえって隠れて吸ったり寝つきにくくなったりすることがあります。また、指に苦い味のするものを塗る方法なども試みられてきましたが5、お子様にとっては負担になる場合があります。
吸っている最中に注意するより、手をつないで寝られた日や遊んでいる間に吸わなかった場面を見つけ、「今日は指さんお休みできたね」と具体的にほめる声かけが向いています5。
祖父母・夫・保育園と方針をそろえる伝え方
ご家族のなかで「早くやめさせたほうがよい」「自然にまかせて待とう」と意見が分かれると、お子様がとまどうもとになります。どちらの意見も否定せず、まずは家で書きとめた「吸う時間・強さ・前歯のようす」を見せ合い、次の歯科健診でみてもらうまでは同じ対応をとるよう話し合ってみてください。
具体的には、「指を吸っていてもその場では叱らず、手をつなぐか別のおもちゃに誘う」と行動を一つに決めておきます。保育園や幼稚園にも家庭での声かけを伝えておくと、日中の関わり方をそろえやすくなります。
ポイント
指しゃぶりは叱って止めるより、吸いたくなる場面で手をつなぐなどの代わりの関わりを増やし、吸わずにいられた場面をほめることが、やめるきっかけの一つになります。
指しゃぶりのことは、歯科健診でどのように相談すればよい?
矯正治療を始める前提でなくても、家庭で観察したメモを持って歯科健診で相談すれば、今は見守ってよいのか、経過を見る時期を決めるのかを歯科医師と一緒に判断できます。
必要以上に大がかりな処置を急ぐのではなく、お子様一人ひとりの成長やご家族のお考えに合わせて、二人三脚でお口の健康を守っていく視点が大切です。
受診前に家庭でメモしておきたい5つのこと
健診や相談の前に次の5つをメモしておくと、診察室では見られない普段の様子が伝わり、判断の材料になります。
1. 吸う時間帯と場面:寝つく前だけか、テレビを見ている時や待つ時間も吸うか
2. 1日のおおよその回数と長さ:合計でどのくらいの時間になっているか2
3. 吸う強さ:指に吸いだこがあるか、眠った後も指が外れずに吸い続けているか
4. 吸う指と入れ方:親指か他の指か、どの向きで口に入れているか
5. 前歯の気づきと写真:隙間や傾きに気づいた時期と、家庭で撮影した口元の写真
普段お口がぽかんと開いていないか、舌を前に出す癖がないかも書き添えるとより詳しく確認できます。
寝る時だけ・日中も長時間・前歯がすでに開いている場合の分かれ目
指しゃぶりの状況や前歯の噛み合わせによって、家庭での見守りと歯科医院での対応の目安は次のように分かれます253。
| お子様の状況 | 対応の目安 |
|---|---|
| 寝つく前の短時間のみで、前歯に隙間がない | 家庭で代わりの関わりを取り入れながら見守り、定期健診で確認する |
| 日中も頻繁・長時間吸い、吸いだこがある | 歯並びへの影響が出やすいため、声かけの工夫とあわせて歯科医院へ相談する23 |
| 前歯の隙間がはっきりしている・4〜5歳以降も続く | 歯科医院で噛み合わせを記録し、経過観察の時期や支援方法を相談する53 |
年齢や状態によっては、お口の周りの筋肉や舌の使い方を練習する口腔筋機能療法(MFT)や、指しゃぶりを防ぐ装置、小児の矯正装置などが検討されることもあります5。指しゃぶりなどの癖でお口の働きの育ちに問題があるときは、「口腔機能発達不全症」として保険で指導や管理を受けられる場合があります。一方、装置などを使う場合は保険が使えない自由診療になることがあり、内容ごとの一般的な目安は次のとおりです。
- MFTや癖のアドバイスだけの場合:期間は6か月〜1年ほど、通う回数は6〜12回ほどです。費用は1回3,000〜1万円ほど、あわせて3万〜10万円ほどが目安です。
- 癖を防ぐ装置や取り外しできる子ども用の装置を使う場合:期間は6か月〜2年ほど、通う回数は6〜24回ほどで、費用はあわせて5万〜40万円ほどが目安です。内わけは、くわしい検査と診断が1万〜5万円ほど、装置代が3万〜30万円ほど、毎回の調整料が3,000〜5,000円ほどです。
※これらは一般的なおおよその金額で、当院の費用ではありません。じっさいの費用や期間、通う回数は、歯科医院や治療の内容によって変わります。当院の費用は、診察のあとにお伝えします。
また、装置を用いる治療には次のような主なリスクや副作用があります。
- 主なリスク・副作用:次のようなことが起こる場合があります。
– つけ始めや調整のあとの歯の痛み・違和感
– 装置が当たってできる口内炎や、赤み・腫れ
– 一時的な話しにくさや、つばが増えること
– 装置のまわりの磨き残しによるむし歯や歯肉炎(歯ぐきの腫れ・出血)
– 歯が動くことによる歯根吸収(歯の根が短くなること)や歯肉退縮、治療後の後戻り
八尾市の谷口歯科クリニックで相談するときの流れ
八尾市で歯科健診や定期検診を受ける際は、むし歯の確認や保護者様による仕上げ磨きの点検とあわせて、前歯の噛み合わせや指しゃぶりの状況を相談できます。一般的には、健診でいまのお口の状態をみておき、数か月後の健診で隙間が広がっていないか、自然に落ち着いてきているかを見ながら経過をみていきます。
久宝寺駅から直結で徒歩1分の場所にあり、建物内の立体駐車場も利用できるため、下のお子様連れや保育園の送迎前後でも立ち寄りやすい環境です。まずは日頃の観察メモをお持ちいただき、今後どのように見守っていくかを整理する場としてご活用ください。
よくある質問
Q. 指しゃぶりと「おしゃぶり」では、歯並びへの影響に違いはありますか?
A. おしゃぶりも指しゃぶりと同様に、長い期間使い続けると前歯が閉じない開咬などの原因になることが報告されています23。おしゃぶりは保護者の管理で使う時間を減らしやすい一方、指しゃぶりはいつでも吸えるため卒業の時期が延びやすいという違いがあります。
指しゃぶりは、3歳頃までは無理にやめさせなくてよく、5歳を過ぎても続くときは歯科で相談するのが目安です。おしゃぶりは使う時間を少しずつ減らしながら、健診のときに歯科医師と卒業の時期を相談すると進めやすくなります。
Q. 指しゃぶりは減ってきたのに、爪を噛む・唇を吸うしぐさが増えたときはどうすればよいですか?
A. 指しゃぶりを我慢しようとして、代わりに爪を噛む癖や下唇を吸い込む癖に移ることがあります。特に下唇を強く吸う癖が続くと、上の前歯が前に傾き、下の前歯が内側に倒れるなど噛み合わせに影響することがあります。指しゃぶりと同じく叱って止めるのではなく、手遊びや保湿リップを塗るなどの工夫をしつつ、歯科健診の際にその様子も伝えて噛み合わせを確認してもらってください。
Q. 歯科医院で経過観察になった場合、どのくらいの間隔で通うことになりますか?
A. お子様の年齢や前歯の隙間の大きさにもよりますが、むし歯予防の定期健診とあわせて、3〜4か月に1回ほどお口のようすをみていくことが多くあります。前歯の生え替わりが近いときや、家での声かけの結果をこまめに見守りたいときは、歯科医師と相談して1〜2か月ごとにみる場合もあります。
参考文献
1. 口腔習癖(指しゃぶりなど) – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/trouble/BK/index09_05.html
2. Gao C, Wang M, He H et al. Association between Non-nutritive sucking habits and Anterior open bite: A systematic review and meta-analysis. BMC oral health. 2025. PMID: 40619361 / DOI: 10.1186/s12903-025-06040-z
3. Sadoun C, Templier L, Alloul L et al. Effects of non-nutritive sucking habits on malocclusions: a systematic review. The Journal of clinical pediatric dentistry. 2024. PMID: 38548628 / DOI: 10.22514/jocpd.2024.029
4. 岡山大学病院 歯と口のトラブルマップ | 病名から探す https://www.hsc.okayama-u.ac.jp/hospital/dnavi/disease.html
5. Borrie FR, Bearn DR, Innes NP et al. Interventions for the cessation of non-nutritive sucking habits in children. The Cochrane database of systematic reviews. 2015. PMID: 25825863 / DOI: 10.1002/14651858.CD008694.pub2
6. 歯の健康/京丹後市 https://www.city.kyotango.lg.jp/top/soshiki/kenkochoju/kenkosuishin/3/9/3494.html
2006年 明海大学 歯学部付属明海大学病院臨床研究
2007年 明海大学 臨床研修終了
2007年 埼玉県の一般歯科勤務 埼玉県地域医療に尽力
2008年 槙原歯科浦和インプラントセンターにて勤務
院長・センター長に抜擢
2014年 ハーバード大学インプラントコース修了(アメリカボストン)
2015年 谷口歯科クリニック 開院
2017年 医療法人善心会 谷口歯科クリニックとして医療法人化
2017年 テンプル大学インプラント解剖学コース修了(アメリカ)
2018年 ベルン大学インプラントコース修了(スイス)
2023年 京橋オレンジ歯科クリニック 開院
日本臨床歯周病学会
日本補綴歯科学会
MID-g役員
日本歯周病学会
日本矯正歯科学会
デンツプライシロナ(アストラ)インプラント認定医
スタディーグループKZ会主催
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